11月の銅概況 日本鉱業協会まとめ

11月の銅概況

2019年11月のLME銅相場は米中貿易協議進展への期待感や堅調な米景気指標を背景に手掛かりに前月までの5,700ドル圏から5,800ドル圏へと上昇。米中貿易協議は第1段階合意をめぐり楽観的な観測が出始めたが、月末にかけて米議会が提出した香港人権民主主義法案に大統領が署名したことに中国が強く反発、貿易協議の合意進展も不安視された。米国経済は、10月の住宅着工件数、非農業部門雇用者数、11月製造業PMIなどで堅調さを示した。ダウ工業株平均は月半ばに史上初めて2万8,000ドルに乗せ、その後も最高値を更新した。中国経済も10月の製造業PMIが2月以来の高水準となり、2か月連続で50を上回った。しかし、中国人民銀行の新規元建て融資は17年12月以来の低水準に落ち込んでいる。

チリでは、アンツコヤ銅鉱山労組は4日ストライキを終了。生産損失量は4,000トン。一方、アンダコージョ銅鉱山労組は21日、ストライキに加え道路封鎖も計画していることを明らかにした。労使間の交渉が決裂し10月14日にストを開始し、スト期間が17年のエスコンディーダ銅鉱山のストを抜き、チリ鉱業史上最長の記録を更新している。また、国内の反政府抗議活動を受け、議会が15日、憲法改正のための国民投票を20年4月に実施すると決めた。昨年の生産実績は6万7,000トン。

コンゴでは、ムタンダ銅コバルト鉱山の操業が25日に停止。コバルト価格低迷、コスト増大、課税強化を理由に今年末に閉鎖される予定だったが、硫酸不足のため閉鎖時期を早められた。

豪州では、26日、ニフティ銅鉱山の操業が間もなく停止される方針であることが示された。コスト高と生産低迷が理由。
ペルーでは、全国鉱山金属鉄鋼労組連合が27日、鉱業界全体としての労働協約交渉を要求し無期限の全国ストライキを開始。9月に次いで2度目のゼネストで、ネクサリソーシズ、グレンコア、トラフィグラ、ボルカン、首鋼集団傘下の労働者が参加した。鉱業石油エネルギー協会はストによる鉱山操業への影響は軽微している。

国際銅研究会によれば、19年1月~8月の世界の銅鉱石生産は1,343万5,000トン。地金生産は1,592万4,000トン、消費は1,625万4,000トンでいずれも前年同期比横ばいとなった。

地金需給バランスはマイナス26万8,000トン減からマイナス33万トンへと引き続き供給不足で推移。在庫は1.2%増の140万7,000トン、在庫消費比率は2.8週間横ばい。鉱石生産の内訳は精鉱が横ばい、SXEWは1.5%減少した。

国別にはチリが鉱石品位低下と年初の供給障害を主因に微減、インドネシアはグラスベルグ、バツーヒジャウ鉱山の採掘鉱体の移行に伴う一時的な減産により51%減少した。コンゴ、ザンビアはSXEW鉱山の一時的な操業停止、計画減産、一部鉱山の操業トラブルで2%減少。オーストラリア、中国、メキシコ、ペルー、米国は鉱石品位の改善や前年の供給障害による減産の反動で増加した。パナマはコブレパナマ鉱山が新規稼働した。地域別には、北米が3.6%増、ラテンアメリカが1.3%増、オセアニアが8%増、アジアが7%減、アフリカが1.2%減、ヨーロッパが2.5%減。鉱山稼働率は82.0%から81.5%へ、ほぼ横ばいの推移。

地金生産の内訳は一次生産が微減、二次生産は1.8%増。国別には、チリがチュキカマタ製錬所の環境改善工事に伴う操業停止により12%減。インドがツーチコリン製錬所の操業を18年4月から停止していることにより25%減。ザンビアが電力途絶や操業トラブル、一時閉鎖に加え、1月1日付で銅精鉱に5%の輸入関税が導入されたことなどで33%減。その他主要生産国では日本、ペルー、米国、欧州の一部の国が定修閉鎖のため減少。中国は能力増強を背景に増加。オーストラリア、ブラジル、イラン、ポーランドは前年の供給障害による減産の反動から増加した。

地域別には、アジアが3.5%増、オセアニアが15%増、北米が3%減、ラテンアメリカが9.5%減、アフリカが8%減、ヨーロッパが1%減。精製工場の稼働率は86.1%から83.6%に低下した。

中国はネット輸入が13%減少したが、未報告在庫の増減を除外した見掛け消費は生産増の影響で2.4%増。その他主要消費国のなかでは米国、台湾が増加、EU、日本は減少した。中国を除く世界は1.5%減少した。

10月の銅地金生産は前月比0.2%増、前年同月比9.3%減の11万9,670トン。東予製錬所の定修か影響して9か月連続の減少となった。出荷は前月比8.3%減,前年比14.8%減の11万8,600トンで、それぞれ2か月ぶりと3か月連続の減少。内訳は内販が前月比2.8%増、前年比9.3%減の8万0,200トンで、それぞれ2か月連続の増加と4か月連続の減少。輸出は前月比25.1%減、前年比24.5%減の3万8,400トンで、それぞれ2か月ぶりと3か月連続の減少。内販のうち電線向けは前年比7.3%減の5万1,800トンで5か月ぶりの減少。伸銅品向けは16.6%減の2万5,300トンで7か月連続の減少。在庫は前月比1.1%増、前年比0.2%増の9万6,700トンで、ともに2か月ぶりの増加となった。

日本電線工業会によれば、10月の銅電線出荷は前月比0.6%減、前年同月比6.5%減の6万0,200トン(推定)、前年比は2か月ぶりに減少。うち内需は前年比6.8%減の5万8,900トンで2か月ぶりの減少。輸出は9.5%増の1,300トンで3か月連続の増加。内需の部門別では、自動車が13か月ぶりの減少、建設電販とその他内需は2か月ぶりの減少、電気機械は14か月連続の減少、電力は2か月連続の減少、通信は3か月連続の減少となった。日本伸銅協会によれば、10月の伸銅品生産は前年同月比13.5%減の6万3,300トン(速報)、11か月連続の前年比減。品種別には、半導体、コネクタ、自動車端子向けの銅条が13.4%減、自動車端子向けの黄銅条は25.8%減でともに9か月連続の減少。コネクタ向けの青銅板条は10.6%減で15か月連続の減少、エアコン向けの銅管は13.1%減と3か月連続の減少となった。

(日本鉱業協会まとめ)
日刊金属

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