JX金属はこのほど、車載用リチウムイオン電池リサイクルのためのベンチスケール設備を日立事業所(茨城県日立市)内に設置し、稼働を開始した、と発表した。今後到来が予見される使用済み車載用リチウムイオン電池の大量発生時代に備え、使用済み電池に含まれるレアメタルを再び車載用電池の原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に向けた技術開発を加速していく考えだ。
近年、世界的な環境意識の高まりを受け、電気自動車など環境負荷が小さい次世代自動車の急速な普及が進んでいるが、こうした自動車の多くにはリチウムイオン電池を使用されるため、その正極材原料となるコバルト、ニッケル、リチウムなどレアメタルの需要は増大することが見込まれる。一方、この先5年から10年を目途に、使用済みとなった車載用リチウムイオン電池の大量発生が見込まれており、使用済み電池からのレアメタル回収は、資源の有効活用、資源の安定確保の両面から重要な課題となっている。
同社ではすでに敦賀工場(福井県敦賀市)において、民生用リチウムイオン電池のリサイクル実証試験を国内最大規模で行っており、廃正極材ではなく廃電池そのものからでもレアメタルを回収できる技術を有している。次のステップとして、同技術を基に、車載用リチウムイオン電池にフォーカスしたクローズドループ・リサイクルの技術開発を進めるべく、日立事業所内にベンチスケール設備を建設し、このほど稼働を開始した。
この設備では、自動車メーカーや電池メーカー各社から提供された原料を元にリサイクル品サンプルを生産し、適切なコストでの処理が可能な量産プロセスを確立することを目的としている。液、塩、メタルなど、さまざまな形状の作り込みができる自由度の高い設計となっている点が特徴で、コバルト、ニッケル、リチウムを金属ごとに分離し、電池グレードの品質で回収することができる。