アルミニウム合金と鋼板の異材接合が可能
レーザ・アークハイブリッド溶接システム
販売開始
ダイヘン・古河電工
ダイヘンは、古河電工と共同で、従来、溶融接合が困難であったアルミニウム合金と亜鉛めっき鋼板の異材接合において品質・信頼性が高い接合を実現するレーザ・アークハイブリッド溶接システムを開発し、2020年1月からダイヘンを窓口として販売を開始する、と発表した。
自動車業界では、CO2排出量削減(燃費向上)を目的とした車体軽量化のため、自動車部品に高強度な鋼板を適用し板厚を低減することで車体軽量化が図られている。近年の電気自動車(EV)の普及などによりさらなる軽量化のためマルチマテリアル化が進むと考えられており、その軽量素材の筆頭となるアルミと鋼板を高品質に接合できる溶接技術が求められていた。しかし、アルミと鋼板の異材接合においては、融点や熱伝導率といった材料特性の違いにより、アーク溶接や抵抗スポット溶接といった溶融溶接の適用が困難とされていた。また、溶融溶接では母材への入熱が高くなることにより接合部に脆弱な金属間化合物(IMC)が生成される。IMCを減らすために入熱を下げると十分な接合強度を有するビード幅を形成することができない。これらのことから、溶接による異材接合で実用的な強度を確保することは実質的に不可能とされてきた。
このため、従来からアルミと鋼板の接合にはリベットや接着剤が用いられるほか、接合部分 を溶融させない固相接合を中心に新接合技術の研究開発が進められてきた。しかしそれらの接合方法は、強度や信頼性に課題があるだけでなく、大掛かりな設備や治具、特殊な接合部材の使用や複雑な接合工程が求められるためランニングコスト面でも課題があった。これらの課題を解決するため、アーク溶接にダイヘン独自のアルミ溶接用の電流波形制御技 術と、精密な入熱制御が可能な古河電工のレーザ技術を組み合わせた独自の溶接・接合システムを製品化した。主な特長は次の通り。
- 高強度な接合を実現。アーク溶接法として極低スパッタを実現するダイヘン独自の「シンクロフィード溶接法」にさらに改良を加えた“アルミニウム合金用電流波形制御法”を採用し、接合部に必要な溶融金属を極低入熱で供給。レーザヘッドは、古河電工独自のビームモード制御機能付き光学ヘッドを採用し、レーザ光を異材接合に最適な形状、入熱量で接合部に照射することで幅の広いビードを形成。また、自動車パネルなどに用いられる6000系アルミと鋼板の接合において、高強度な5000 系溶接ワイヤとの組合せにより6000系アルミ部で母材破断する接合強度を実現している。
- 導入が容易。アーク溶接をベースとした異材接合技術であるため、現状の溶接ラインに使用されている設備が流用可能。また、構造部材の形や生産工程を大きく変更することなく、構造部材の素材をアルミに変更することが可能。
- 工程時間を半減。溶接材料として一般的なアルミニウム溶接に使用される5000系ワイヤを用いるだけで、アルミと鋼板の異材接合が可能。また、他接合法に用いられるリベットや接着剤などといった接合方法と比べ工程時間が半減し、特殊な材料も不要となるためランニングコストを低減する。